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基調インタビュー:魅力的なオルタナティブ

シュローダー・キャピタルのプライベート・エクイティ・プロダクトマネジメント責任者のティム・ブールは、PEI誌への寄稿記事の中で、富裕層の投資家によるプライベート市場への関心が高まるにつれ、テクノロジーと規制も同様のペースで発展していかなければならないと述べました。

2024年2月6日
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著者

Tim Boole
Head of Product Management, Private Equity

富裕層の投資家がプライベート市場への関心を高めている主な要因とは何ですか?

富裕層の投資家は、プライベート市場が歴史的に提供してきた高いリターンにアクセスしたいと考えています。また、上場資産では実体経済へのエクスポージャーが限定的であるとの認識も高まっています。さらに、多くの投資家が2022年にパブリック市場や債券のポートフォリオでかなり厳しい状況に陥ったため、2023年には長期目標をより達成するために、低ボラティリティで強力なリターンを提供するオルタナティブ投資により注目が集まりました。

一方、供給サイドでは、テクノロジーの進歩により、以前は不可能だった方法で投資家がプライベート市場にアクセスできるようになりました。例えばデジタル資金調達プラットフォームの台頭などです。規制の変化もこの変化を後押ししており、商品のイノベーションは、個人投資家の固有ニーズに、より適したファンドの利用を可能にしています。

プライベート・マーケット会社が伝統的な機関投資家からの資金調達で直面している課題をふまえると、富裕層へのアクセスが優先事項となっているのでしょうか?

現在、プライベート市場への資産配分が相対的に低いことをふまえると、世界の富裕層は、プライベート・マーケット資産運用会社にとって巨大で潜在的な顧客ベースであることから、投資マネージャーにとって最も重要な顧客セグメントの一つです。これと並行して、年金基金や保険会社などのプライベート市場における伝統的な顧客グループの多くで、新規投資のペースが鈍化しています。これは、ポートフォリオにおけるプライベート市場への資金配分が限界に達してしまう、デノミネーター・エフェクト(分母効果)も一因です。

また確定給付型年金(DB)がリスク軽減されているか、リスク軽減策の過程にあるなどの、構造的な要因もあります。これとは対照的に、プライベート・ウェルスの投資セグメントは低水準から急成長しています。これを受けて、多くの大手プライベート・マーケット資産運用会社は、この資金プールの活用に多大なリソースを投入してきました。ウェルス・マネジメントに特化した専門チームを設立し、投資信託プラットフォームなどの従来のインフラ・プロバイダーともパートナーシップを結んでいます。こうしたプラットフォームは、最終的に富裕層の資産を管理し、 影響を与えるプライベート・バンクやウェルス・マネージャーのゲートキーパーとして機能することが多いため、こうした関係を構築することは非常に重要です。

また、富裕層に特化したファンドも立ち上げられています。こうしたファンドは、通常の複数のキャピタル・コールに対して単一のキャピタル・コールといった違い、より高い柔軟性を提供するセミ・リキッド構造、一般投資家にも販売可能な規制ファンド構造など、富裕層にアピールするために特別に設計された特徴を備えています。

富裕層の資産投資の成長を妨げている課題とは何でしょうか?

かなり多くの課題が残っています。確かに、従来のプライベート・エクイティ・ファンドを、富裕層の特定のニーズや嗜好を考慮することなく、そのまま富裕層の投資家に売り込むことができると考えている人は、成功を収める上で困難を極める可能性があります。

多くのウェルス・マネージャーやプライベート・バンクは、特に投資家がコミットメントを行い、時間の経過とともにキャピタル・コールを受けるという、古典的な意味でのプライベート市場へのアクセスを提供することに、業務面でまだ十分には適応していません。こうした運用上の配慮が、富裕層からの投資の成長をかなり妨げています。とはいえ、ウェルス・マネージャーやプライベート・バンクは、プライベート市場に対する投資家の関心が一時的なものではないことを認識しており、課題を克服する必要があることを認識しつつあります。これは長期的なシフトであり、結果として、プライベート市場へのアクセスをサポートするシステムに投資しています。しかし、富裕層の顧客ベースにプライベート資産を販売する際の、引き続き大きな障壁であることに変わりはありません。

規制環境も依然としてかなり制限されています。市場によっては、どのような顧客にマーケティングでき、どのような商品を売り込むことができるかということに対し、実質的な制限があります。加えて現在、経済的および政治的な不確実性が大きくなっています。金利が高いため、投資家はより流動性の低い資産への投資に慎重になっています。キャッシュで6%のリターンが得られるとなれば、それは魅力的であるため、マクロ経済の状況がどうなるかを様子見する間、プライベート市場への参入を控えるという投資家もいます。

プライベート・マーケットの民主化について、会社としてどのように取り組んでいますか?またこの分野でどのようにビジネスを構築しようとしていますか?

私たちの最優先事項は、ウェルス・マネージャーやプライベート・バンクのパートナーとして認められることです。つまりプライベート市場への富裕層投資に関して、単一のエントリー・ポイントににならないようにすることです。私たちは、プライベート・マーケット・ファンドを立ち上げ、あとは投資家に選んでもらうのを待つだけ、というつもりはありません。販売する投資家のタイプや資金調達の対象となる資産クラスに応じて、複数のエントリー・ポイントを用意する必要があります。

多くの投資家は、既に準備された、幅広いオプションの中から選択できる投資機会を重視しており、セミリキッドファンドはその需要に応える上で重要な役割を果たしてきました。しかし、オーダーメイドのホワイトラベル方式に対する需要も見られます。このようなシナリオでは、プライベート市場へのアクセスを容易にするために、私たちは全ての作業を舞台裏で行い、ストラクチャリングを実行することで、投資選択をサポートすることができます。こうすることで、ウェルス・マネージャーやプライベート・バンクは、プライベート市場をどのようにポートフォリオに組み込み、その投資機会を最終投資家に販売する方法を考えるだけで良いのです。

2024年、特に欧州長期投資ファンド(ELTIF)2.0に関連する規制当局のシナリオはどのように進展すると予想されますか?

ELTIF 2.0に関しては、まだ不透明な部分が残っています。確かに、ELTIFが投資できるものとできないものに関しては改善が見られました。資産への直接投資だけでなく、ファンドへの投資が可能になったことは、特にファンドへの投資はより高いレベルの分散を提供するため歓迎すべきことです。直接投資で多様なポートフォリオを構築しようとすると、ファンドの規模を大きくする必要があり、新規のマネージャーにとっては参入障壁となります。

投資家の適格性に関しても改善が見られました。例えば、ウェルス・マネージャーやプライベート・バンクは、これまで実施する必要性があった複雑な適格性チェックを行うことなく、顧客ベースにELTIFを提供することが容易になります。

しかし、流動性メカニズムに関しては依然として多くの不確実性が残っており、その不確実性は大方の人が予想していたよりも長く続いています。当初の予想では、1月中旬にはELTIF 2.0に関するすべての情報が公開され、直ちに新しいファンドが続々とローンチされると予想されていましたが、その可能性は低いように思われます。本稿執筆時点では、償還や流動性の観点から何が許容されるのかという点で、疑問が残っており、さらなる明確化が待たれます。

私たちは引き続き業界団体と緊密に連携し、これらの問題に取り組む際に、ガイダンスを提供していきます。もちろん、私たちが望まないことは、成長が始まる前からその成長を阻害するような一連の規則ができてしまうことです。私たちは、プライベート・ウェルス市場で利用可能なELTIFを健全なレベルで選択できるような状況を目指す必要、即ち参入障壁の軽減に取り組む必要があります。

この民主化の進展はどこまで進むと思われますか?

プライベート市場において、富裕層が今後非常に重要な役割を果たしていくことに全く疑問の余地はありません。欧州だけでなく、アジアや米国でも、私たちが目にしている需要のレベルが高いからです。とはいえ、まだ多少の躊躇も見られます。プライベート・バンクやウェルス・マネージャーは、その需要に業務上対応できるかどうかについて、慎重な姿勢を示しています。

従って、教育は不可欠となります。最終投資家の教育だけでなく、そのような投資家を担当するリレーションシップ・マネージャーの教育も重要です。教育することで、自分たちが売っている商品が何なのか、そしてそれが特定の個人にとって適切であるかどうかを真に理解できるようになります。

テクノロジーも大きな役割を果たすことになります。特に、トークン化への関心が高まっています。これはシュローダーが多大な時間を費やして取り組んでいるものです。私たちのチームは、さまざまな地域で複数のパイロット・プロジェクトに取り組んでおり、トークン化をどのように活用すれば、プライベート市場だけでなく上場市場においても富裕層向けの投資が実現できるかを検証しています。

プライベート市場では、トークン化により、より優れた柔軟性と流動性をもたらす可能性があると同時に、煩雑になりがちな購入手続きにおけるコストの一部が削減されます。プライベート・アセットに対する不慣れな面を克服し、テクノロジーが提供できるメリットを受け入れることで、多くの変化がもたらされる可能性があります。

最後に、テクノロジーの発展に伴い、上場市場とプライベート市場の境界線がますます曖昧になっていくという考え方もあります。債券市場ではすでにその傾向が見られていますが、流動性規制が緩和され、トークン化によってより高度な取引が可能になれば、上場株式と伝統的なプライベート・エクイティとの区別は薄れ始めると予想しています。

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