プライベート・マーケットの見通し 2024年第1四半期: 新たな年、新たな投資機会

先進国市場の金利がピークアウトの兆しを見せ、プライベート市場の活動がここ数四半期で減速局面にある中、私たちはプライベート市場全体に魅力的で新たな投資機会があると見ています。特に、世界的な3つの「D」のテーマやAI革命に沿うような投資機会は特に魅力的と言えるでしょう。

2024年2月6日
Commuters Manhattan

著者

Nils Rode
Chief Investment Officer

パンデミックの間、資金調達活動は非常に好調でしたが、2023年は多くのプライベート・アセットの資産クラスで資金調達活動が鈍化しました。現在、プライベート・エクイティ市場は、資金調達、投資活動、バリュエーションの面で、パンデミック以前の水準にほぼ戻っているとみられます。しかし特筆すべき例外として、プライベート・エクイティの大型バイアウトでは、資金調達活動が引き続き活発で、高水準のドライパウダーがエントリーバリュエーションの上昇をもたらすため、懸念しています。さらに、インフラストラクチャーやベンチャー・キャピタルの資金調達は大幅に低迷しており、不動産の評価は、一部の地域や市場セグメントで大幅な調整が行われています。

楽観的な時代が来た

先進国市場は、インフレ率を政策目標に近づけるために目覚ましい前進を遂げ、特に米国では、成長率への影響は市場の予想よりもかなり小さなものとなりました。地政学的リスクや2024年の成長期待の鈍化から潜在的な不確実性が生じる一方で、プライベート市場の状況は(一部の例外を除き)ほぼ正常化していることを踏まえると、プライベート市場への投資の可能性について楽観的になる時期が来たと私たちは考えています。

プライベート市場は、リスク・プレミアムの多様化、ディフェンシブな特性を持つ投資対象へのアクセス、脱炭素化(Decarbonisation)、脱グローバル化(Deglobalisation)、人口動態(Demographics)、AI革命といったグローバルな、私たちが総称して 「「D」が導く新時代」 と呼ぶテーマへのエクスポージャーなどの利点があります。このようなトレンドの多くは、サステナビリティやインパクトに沿った投資、再生可能エネルギー、生成型AI、インドへの投資といった、特定の投資カテゴリーにおいて、有利に働くでしょう。同時に、こうしたテーマの中にはインフレをもたらすものもあり、金利上昇の一因となっています。銀行に対する規制上の自己資本制限によって生じる資金調達ギャップと相まって、魅力的な融資機会を生み出すと予想しています。

資本フロー: 逆張りの指標

多くのプライベート・マーケット戦略は、資金調達が利用可能なドライパウダーの量を決定し、それがエントリー・バリュエーション、最終的には投資リターンに影響を与える、クローズドシステムとして機能しています。従って、私たちは中小型バイアウトのように安定した資金調達のダイナミクスを持つ戦略を選好し、インフラ・エクイティやベンチャー・キャピタルのように資金調達力が長期トレンドから大きく乖離している戦略には潜在的な機会を見出しています。また、不動産デット、保険リンク証券、スペシャリティ・ファイナンス、マイクロファイナンス、プライベート・クレジットなど、伝統的な資本提供者の撤退により、資本ニーズが高まっている戦略にも注目しています。

選択性が引き続き鍵

現在のプライベート投資の多くは、「リアップ」、つまり既存のパートナーとの再投資を伴うものです。パンデミックは、新たな戦略のデューデリジェンスや新たなマネジャーとの面会が課題となったため、この傾向はさらに増幅しました。

しかし3つの「D」のテーマとAI革命による新たな市場ダイナミクスを考慮すると、過去の成功が再現可能かどうかを疑問視することが極めて重要であると考えています。既存のパートナーや戦略が、今日のトレンド(脱炭素化、脱グローバル化、人口動態、AI革命)に対応できているでしょうか?サブセクター内の資金調達とドライパウダーの動向は健全でしょうか?市場ダイナミクスの変化を考慮すると、機会セットも進化する必要があるでしょう。

現在、これまで以上に、こうした変革的なトレンドや政策変更から恩恵を受ける機会への投資を拡大し、成熟度に合わせてプライベート資産の配分を多様化し、効率性の低い市場や機会へのアクセスを提供する健全な資金調達ダイナミクスを備えた分野に注力することがこれまで以上に重要です。

続いて、これらの基準に基づき、各プライベート・アセットの資産クラスの中で最も魅力的な機会がどこにあると考えられるかをまとめます。

プライベート・エクイティ

プライベート・エクイティ投資における重要な成功要因は、先に述べたようなトレンドに沿った、複雑性プレミアムを獲得できる機会に焦点を当てた、高度に選択的なアプローチであると考えています。こうした投資機会には、投資先企業の自律的成長およびM&Aなどを通じた外部的成長を促進する独自のスキルが必要です。

大型バイアウトファンドは通常、投資先企業の大半を他のファンドから取得しますが、大型ファンド間の強力な資金調達活動によって、中小型バイアウトファンドは、投資先企業を大型バイアウトファンドへ売却するという出口戦略が加わり、今後数四半期は有利なドライパウダー環境と相まって、中小型バイアウトファンドのパフォーマンスは大型バイアウトファンドを上回ると予想しています。

また同様のダイナミクスにより、ディスラプティブなシード投資やアーリーステージ投資は、レイトステージ投資やグロース投資よりも高いレジリエンスを示すと予想されます。アーリーステージ投資は、特にAIの分野で、新たな投資機会を得られるという利点がある一方、厳しい資金調達環境により、エントリー・バリュエーションに関する規律が維持されます。一方、レイトステージまたはグロース投資は、ベンチャー・キャピタルからの資金調達の減少と、IPOの窓口がまだ再開されていないため、借り換えリスクとバリュエーションリスクの増加に直面しています。

特にヘルスケアとテクノロジーセクターは有望であると考えています。地域的には、北米、西欧、中国、特にインドが引き続き魅力的です。中国では、人民元建オンショア市場で最も魅力的な機会があると考えています。

GP主導の取引はさらに増加すると予想しており、これにより同じマネージャーが、優先的な投資先企業を継続保有し、さらに発展させることを可能にします。

プライベート・デットとクレジット・オルタナティブ

現在ほとんどの市場において、インカム収入は非常に魅力的な水準です。先進国市場の金利はピークに達したか、またはピークに近づいている可能性が高く、より高いインカム収入を提供しています。加えて、レバレッジは低く、条件も有利になっています。

私たちは、変動金利、有形資産の裏付けによる強固な安全性、インフレへの契約上の連動またはパス・スルー型に連動するデットを提供する投資を好みます。インフラデットのように、ディフェンシブな機会を提供するセクターもあれば、商業用不動産のようにファンダメンタルズの大きな変化により、選択的な機会を提供するセクターもあります。

米国での在宅勤務トレンドのように、大きな変化が起きている場合には注意を払う必要があります。不動産デットでは、賃貸住宅や学生寮など、ファンダメンタルズの強いセクターに注目しています。オフィスセクターは、需給の変化が十分に理解されれば、魅力的な機会が生まれるかもしれません。

資産担保証券(ABS)や住宅ローン担保証券(MBS)、ローン担保証券(CLO)は、伝統的な企業クレジットやローンからの分散を提供します。量的引き締めによる米連邦準備制度理事会(FRB)や、バーゼルIII規制の導入で米銀などの主要な買手が撤退したことで、これらの高格付け証券において、魅力的な機会が開かれています。

コーポレート・ローン市場には、シンジケート・ローン、プライベート・ローンともに多額の資本が流入しているため、慎重に対処する必要があるでしょう。ローンは底堅さを見せており、利回りは基準金利の上昇と、拡大したイールド・スプレッドの恩恵を受けていますが、ローン価格は割高となっており、パー・ローンにはコール・プロテクションがなく、現在ではローンのリプライシングがかなり行われています。私たちの見解では、高い選択性が鍵となるでしょう。

保険リンク証券は伝統的資産との相関がないため、ポートフォリオに貴重な分散効果を提供します。さらに、高いリスク・スプレッドはポートフォリオに魅力的なリターンをもたらします。マイクロファイナンスも分散とリターンの相関性の低さから、魅力的な選択肢です。

インフラストラクチャー

インフラストラクチャーの中でも、再生可能エネルギーはインフレとの連動性が高く、確実な収益が期待できるため、特に魅力的であると考えています。また、エネルギー価格や天候などの差別化されたリスク・プレミアムへのエクスポージャーを通じた分散化にも貢献します。

再生可能エネルギーは、脱炭素化のトレンドに加え、ウクライナで進行中の戦争により、エネルギー安全保障に対する懸念の高まりや、化石燃料への依存を減らす必要性から恩恵を受けています。さらに生活コストの上昇から、手頃な価格のエネルギーへのアクセスが課題となりましたが、世界中の多くの地域で、再生可能エネルギーは現在、建設可能な発電源の中で最も安価となっています。

水素、ヒートポンプ、バッテリー、電気自動車の充電といった再生可能エネルギーに関連する隣接技術は、輸送、熱、重工業といった産業の脱炭素化を可能にする上で重要な役割を果たすでしょう。

現在、多くの再生可能エネルギー・プロジェクトに対し、資本投資は限定的で顕著な差があるため、高いリターンが期待でき、特にコア/コアプラスの戦略で魅力的なエントリー・ポイントとなっています。

さらに、デジタル化や基幹サービスに関連するその他のインフラセクターでも魅力的な機会があり、インフレに連動し、多くの場合において安定的なリターンが期待できます。

最も魅力的な、サステナブル・インフラ投資機会の多くは、欧州と北米で見つけることができますが、非常に選択的にではありますが、新興国市場でも機会を見出すことができるでしょう。

不動産

不動産市場は、新たな高金利環境、インフレ圧力、地政学的変化、投資家の投資配分に影響を与える市場変動などにより、大幅な価格の調整が行われました。

需要がやや軟化しているにもかかわらず、不動産賃貸市場は、高い建設費と借入金調達コストの上昇、およびサステナビリティに適合したスペースの不足に起因する逼迫した供給状況により、依然として底堅さを保っています。こうした状況は、中期的には成長を促す可能性があります。進化する規制やテナントの需要に応えるためには、サステナビリティとインパクトへの配慮を優先することが極めて重要であり、そのためには資本支出の増加が必要となります。

不動産セクターは、これまでの価格調整の程度と不規則な傾向から、より広範で循環的な購入機会の初期段階にあると考えています。資本構成、物件タイプ、地域を問わず、時間の経過とともに投資機会が出現するため、忍耐強く待つことをお勧めします。

英国や北欧地域、次いで米国やその他の欧州大陸市場など、価格の再調整が最も早かった市場で、当面の買い機会が見られるでしょう。アジア太平洋地域では、中国の景気回復に連動する市場や、サプライ・チェーンのニアショアリング/フレンドショアリングの代替となる市場に、循環的な投資機会が集中しています。

インダストリアルと物流施設は大幅に価格が上昇しましたが、依然として強い構造的ファンダメンタルズに支えられています。私たちは、強い需要サイドの追い風があり、直接または間接的にインフレに連動した収入をもたらすことができる、運営可能な物件を選好します。セルフストレージ、ホテル、高齢者向け住宅、一部の住宅セグメント、ヘルスケア関連の不動産などです。

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